準備書面1(原告)


令和4年(行ウ)第5号 議会決議取消等請求事件 

原 告  安田 慎       

被 告  富 山 市

 

準備書面1(原告)

                          

令和5年5月10日

(次回期日:令和5年5月10日)

 

富山地方裁判所民事部C合議1係 御中                                                 

原告訴訟代理人

弁護士  德 永 信 一

 

答弁書における「被告の主張」に対する反論等

 

ポイント

 

1 地方議会の決議の行政処分性について  

2 原告の訴えの利益について  

3 宗教的憎悪の唱道(宗教的ヘイト)の禁止について  

4 政治参加における差別的取扱の禁止について 

5 適正手続保障の権利侵害について  

6 本件教団の関連団体としてのUPFについて  

 

目  次

 

第1 本件決議が取消し請求の対象たりえないこと 

 1 公権力の行使について 

 2 地方議会の決議の行政処分性について 

 3 行政処分性の判断基準について 

 4 本件決議の行政処分性について  

第2 原告適格について  

 1 被告の主張

 2 原告が有する訴えの利益 

第3 国家賠償請求について 

 1 同⑴:(適正手続保障の侵害)

 2 同⑵:(宗教的信条表明権の侵害)

 3 同⑶:(請願権及び政治参加の自由の侵害)

 4 同⑷:(宗教を理由とする差別的取扱い) 

第4 本書で追加した事項の整理 

 1 宗教的憎悪の唱道禁止について 

 2 政治参加における差別的取扱の禁止について

 3 適正手続保障の権利侵害について

 4 本件教団の関連団体としてのUPFについて    

 

 

第1 本件決議が取消請求の対象たりえないこと 

 1 公権力の行使について    

 被告は行政事件訴訟法3条2項が規定する「行政庁の処分その他公権力の行使」における「公権力の行使」とは、「法律が認めた優越的な地位に基づき一方的に国民の権利や義務を変動せしめ、あるいは国民の身体や財産に実力を加える継続的な行為で国や公共団体だからなしうる、あるいは国や公共団体でなければなし得ない行為を中核とする概念」と主張し、議会の議決は、公共団体の内部的意思決定に過ぎず、公共団体の行為として効力を有するものではない(最判昭和28年6月12日〔乙3〕)とか、外部に対して直接法律上の効果を及ぼすものでもない(最判昭和29年1月21日〔乙4〕)としてこれに該当しないとする。

 

 思うに、前記定義と上記当て嵌めは整合していない。地方議会は地方自治法89条に基づいて設置され、普通地方公共団体の意思決定機関として機能する公権力であり、本件決議は、憲法92条の地方自治の本旨(住民自治、団体自治)に依拠してなされたその自律権に基づく事実上の意思形成行為であり、政治的効果をねらい、あるいは、議会の意思を対外的に表明することが必要である等の理由でなされるものであり(甲5)、それが国民の権利や義務を変動せしめるものであれば、公権力の行使であるといえる(すなわち、公権力の行使かどうかは、決議の内容による)。

 

 そもそも被告が指摘する「地方議会の決議」の性格に関する最高裁判例の判示(乙4)は、その判示から明らかなように行政処分性に関するものであり(一般的な原則論として「議決そのものは、行政庁の処分すなわち行政訴訟の対象となる行政処分ではなく」としている)、「公権力の行使」に関するものではない。

   

 2 地方議会の決議の行政処分性について 

 被告が引用する最高裁第一小法廷昭和29年1月29日判決(乙4)は、一般的原則論として「県議会の議決すなわち県の意思決定そのものは、それ自体として外部に対し意思が表示されるものでもない。」などとし、「この議決に従って執行機関である知事が執行することによって、外部に対し、県の意思が執行することによって、外部に対し県の意思が表示され、外部に対してはじめて法律上の効果を生ずることとなる。」などとして、地方議会の決議の行政処分性を否定する。

 

 しかしながら、地方議会議員の除名決議については、「本件における通常の決議とは異なり、執行機関による執行は行われず議決自体で除名の効力を生じるものであり、従って行政処分たる性質を有するのである。」と判示する。すなわち、地方議会の決議は、その効力の直接性の有無が問題とされているのである。     

 

 本件決議は、執行機関による執行は予定されていない。本件決議をもってその事実上の効果が発生し、本件教団並びにその関連団体及びその信徒たる原告の人権侵害が惹起されるのである。    

 

 本件決議が、富山市議会の意思形成による対外的な意思表明であり、執行機関による執行によることなく事実上の人権侵害の効果を有することに照らし、それが「行政処分たる性質」を有することは明らかである。  

 

 3 行政処分の判断基準について 

 ⑴ 被告は、「行政庁の処分」について「国民の法律上の地位ないし権利義務関係に直接何らかの影響を及ぼす行為」であるとし、およそ議会決議がそれに該当しないことは明らかであるとする。しかし、前述のように議会決議も執行機関による執行を俟たずに直接法的効果を持ち、あるいは直接的に特定人の人権侵害の結果を惹起する行為が行政処分たる性質を有することは争いえない(昭和29年最判〔乙4〕も除名決議が行政処分としての性格を有することを認めている)。

 

 ⑵ 被告の用いる「処分」の前記定義が何に依拠するものか判然としないが、一般には、「公権力の主体である国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているもの」(最一小判昭和39年10月29日等)と定式化されているところである。但し、この定式は、それ以降の判例の積み重ねによって、「この判示は、処分の中核部分を記述したものであっても、それ以上のものではなく、これを演繹的に適用し て、問題となる具体的な処分性を決定することはできないというべきである。」と評されている(岡村修一「行政事件訴訟法・国家賠償法(第2版)」室井力・芝池義一・浜川清編著p35〔甲6〕)。

 

     そして「具体的な行為に処分性が認めらるか否かは、当該行為自体の性質のほか、関係する国民の権利利益の性質、それが影響を受ける程度、当該行為が関係する一連の過程の中でそれが占める位置、後の段階での訴訟提起の可能性等の諸般の事情にかかっている。」という(前同)。

 

 4 本件決議の行政処分性について 

 ⑴ 思うに、被告は、本件決議が意思表明の事実行為であり、法的効果を 伴わないものであることを理由に処分性を否定しているようである。しかし、「富山市議会が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)及び関 係団体との一切の関係を断つ決議」をタイトルとする本件決議(甲1) は、本件教団とその関連団体を名指しで取り上げ、「極めて問題のある 団体」であると決めつけ、「富山市議会も、藤井市長並びに当局と同じく旧統一教会及び関連団体と今後一切の関係を断ち切る」と宣言するものであり、富山市議会及び市議会議員らとの交流、接触ないし働きかけを拒絶するものである。それは宗教的差別により、本件教団、関連団体及び本件教団の信徒を、被告の政治的プロセスから排除するものにほかならない(国際人権B規約25条〔甲8〕)。  

 

 よって、それが宗教団体がその教義等を実現するために信条等を表明 し、政治に参画する権利(国際人権B規約18条1項、宗教的不寛容    排除宣言1条1項〔甲9〕)を事実上制約するものであることは明らか  である(そのことは、すなわち、これらを内容とする信教の自由(憲法20条1項前段)に違反することになる)。

 

 ⑵  また、本件決議と同様、行政庁が発する通知、告知、戒告、行政指導、勧告といった措置は、直接的な法的効果を有しない事実的な表現行為であるが、かかる「精神的表示行為」は、前記昭和39年最判に基づく定義からは処分性は否定されることになるが、実際の適用事例では必ずしもそうではない(塩野宏「行政法Ⅱ〔第6版〕」p114~〔甲7〕)。

 

 例えば、食品衛生法16条の検疫所長の通知に処分性を認めたもの(最 判平成16年4月26日民集58巻4号989頁)、登録免許税法上の還付通知請求拒否通知に関して処分性を認めたもの(最判平成17年4月14日民集59巻3号491頁)、土壌汚染対策法3条に基づく有害物質使用特定施設使用廃 止通知の処分性を認めたもの(最判平成24年2月3日民集66巻2号148頁)がある。行政指導としての勧告についても、医療法30条の7に基づく病院開設中止勧告の取消請求に関して、最高裁は、当該勧告は医療法上は「当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすも  のということができる」などとし、中止勧告の処分性を認めた(最判平成7年7月15日民集59巻6号1661頁)。    

 

 要するに、事実行為であっても精神的表示行為については、それが権利義務の範囲や有無について法的効果を持つものではなくとも、当該表示行為によって生じる重大な権利侵害が相当程度確実であり、抗告訴訟による実効的な救済の必要が認められるものであれば、行政処分性が認められるべきなのである。       

 

 ⑶ 本件決議は、          

 ①公権力の行使:地方自治法89条によって設置された議事機関たる富山市議会による対外的な政治的意思の表明であり、憲法92条の地方自治の本旨(住民自治ないし集団自治)に根拠を有する「公権力の行使」そのものであること

         

 ②直接の効果としての人権侵害:本件決議は執行機関による執行を予定せず、本件決議の直接的効果として信教の自由、法の下の平等、請願権等の政治的参画の自由が侵害されるものであること  

 

 ③政治的プロセスからの排除:本件決議から直接的に発生するのは本件教団、その関連団体及び信徒らと富山市議会議員との交流、接触、相互の働きかけが拒絶されることであり、これによって本件教団関係者や本件信徒らが政治的プロセスから排除されることであり、原告を含む本件信徒らは、これによって国際人権B規約25条違反の人権侵害を受けること 

 

 ④国民の権利(信教の自由、請願権等)の侵害:宗教団体及びその信徒が、信仰する教義や信条を表明し、地域のコミュニティーに働きかけ、社会的、政治的にその理想を実現する活動をすることは、宗教的表明の自由として国際人権B規約18条1項で保障されているところ、本件決議によって政治的プロセスから排除されることで、本件教団及び信徒らは、その宗教的表明の自由を含む日常の信仰活動の自由及び請願権を侵害され、もって宗教的不寛容撤廃宣言2条1項が戒める機関による宗教的差別を受けること  

 

 ⑤差別の扇動(名誉感情の侵害):本件教団等を「極めて問題のある」団体だと決めつけ、「今後一切の関係を断ち切る」と宣言することは、差別と敵意を煽る宗教的憎悪の唱道(宗教ヘイト)であり、法で禁じることが要請されている(国際人権B規約20条2項)。法による規制は私人間の人権調整の必要からであるが、調整の必要のない公的機関である富山市議会による宗教ヘイトは当然に違法であり、これによって信徒らの名誉感情は著しく害されること  

 

 ⑥実効的な救済の必要:本件決議の直接の対象とされた本件教団及びその関連団体並びに原告を含む信徒が被っている深刻な人権侵害からの「実効的な救済」のために、本件決議を抗告訴訟の対象とすべきであること      

 

 よって本件決議は、行政事件訴訟法3条2項にかかる処分行為というべきであ る。   

                

第2 原告適格について 

 1 被告の主張    

 被告は、「処分の取消しを求める訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起しうるとされているところ(行訴法9条1項)、原告の主張する権利侵害はいずれも本件決議により直接的に生じたものということはできず、原告には適格性がないというべき」だとする。

   

 2 原告が有する訴えの利益 

 ⑴ 原告の請願権(政治参加の自由)  

 思うに、特定の宗教団体と「一切の関係を断つ」ことは、本件教団の名をもって活動する信徒との関係も断絶することを意味する。一般に指定暴力団との「一切の関係を断つ」ということが、現役の暴力団員との交友関係も断つことを意味するのと同じである。

 

 本件決議によって原告は本件教団の信徒ないし本件教団の関連団体の役職等を名乗ってする政治参加の自由を奪われたのである(信徒であること等を伏せてする政治参加が可能だということは、それ自体が差別であることに留意されたい)。 

 

 実際に原告の請願権が本件決議によって侵害されたことは訴状で述べたとおりである(甲2、3)。富山市議会の鋪田博紀議長が、原告からの依頼を断る1つの理由として、本件決議をあげていることからも明らかである(甲4)。 

 

 ⑵ 宗教的憎悪の唱道(原告の名誉感情)

 本件決議は、本件教団に対する差別や敵意を扇動し、宗教的憎悪を唱道する宗教ヘイトであり、国際人権B規約20条2項が法をもって禁じることを要請している違法行為である。宗教的不寛容撤廃宣言2条1項は、富山市議会を含む「機関による差別」を禁じ、同3条前段は「宗教又は信念を理由として人間が相互に差別し合うことは、人間の尊厳に対する侮辱であり、国際連合憲章の原則を否定するものである。」としている。 

 

 自らが帰依する本件教団をその宗教活動を理由に「極めて問題が多い」《反社会的団体》だとして断罪された本件教団の信徒である原告はその人格的自尊心の根源に由来する名誉感情を著しく傷つけられた。 

 

 ⑶ まとめ

 原告の請願権の侵害及び名誉感情の毀損は本件決議がなくならない限り、本件決議の事実上の効果として発生し続けることになる。よって、原告には本件決議の取消を求める訴えの利益があるのは明白である。

     

第3 国家賠償請求について 

 1 同⑴:(適正手続保障の侵害) 

 被告は、「霊感商法」などで社会問題が明らかとなった旧統一教会という団体との関係を断つことの宣明であって、従前その実態が明らかでなかったことを踏まえてのものであるので、議会として何ら違法とされる筋合いのものではない。」と主張する。

 

 しかしながら、行政機関から「今後一切の関係を断ち切る」という不利益を賦与されるには、適正な防御の機会を得て、中立公正な審判者による適正な手続を経ることが必要とされる。これは憲法31条ないし同13条の要請するところである(後述第4-3)。

 

 本件教団並びに関連団体及び信徒は、「極めて問題のある団体」だとして不利益を賦与する本件決議の全過程を通じて、適正手続の保障は何ら受けてこなかった。富山市議会は、マスコミが一方的に垂れ流した偏見に充ちた情報のみを基礎として本件教団、関連団体及び信徒らの権利を侵害する本件決議を行ったのである。 

 

 公的機関による不利益決議において不利益を被る本件教団らに対する適正な手続保障の権利が侵害されたことは、それ自体、本件決議の違法性を浮き彫りにするものである。 

 

 2 同⑵:(宗教又は信念の表明の自由の侵害)  

 被告は、「原告が主張する信仰や信条の侵害については、本件決議が何らかの処分や毀損をしたことはない。」と主張する。

 

 被告の上記主張は信教の自由を内心の自由と解したものであると思われるが、宗教的信教の自由は内心の自由にとどまらない。国際人権B規約18条1項は信教の自由について「すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。」とした上で、「この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。」とし、信教の自由には、宗教又は信念を表明する自由が含まれることを鮮明にしている(甲7)。宗教の自由については、これと全く同じ定義が、宗教的不寛容撤廃宣言1条1項においても使われている(甲8)。 

 

 多くの宗教は、他の信者とともにコミュニテーを形成し、その教義が説く理念や戒律に従って生きる社会をめざし、その社会の実現を目指して政治に働きかける動因を有している。その場合、その政治的働きかけそのものが、教団と信徒による宗教的信念の表明ということができる。原告が本件決議による侵害を主張しているのは、この宗教又は信念の表明の自由についてである。それは内心的自由にとどまらないため、公共の福祉に基づく法による規制を受け得ることが注意的に規定されている(B規約18条3項)。     

 

 更に、国際人権B規約25条は、政治的参加の自由について宗教を理由にした差別的取扱いを受けないことを保障している。日本国憲法が保障する信教の自由は、国際人権B規約18条1項の宗教又は信念を表明する自由を含み、同規約25条の権利を保障するものであることは争う余地はない。 

 

 本件決議は、本件教団及び関連団体並びに信者に対し、上記宗教的信念の表明及びこれに基づく政治的参加の自由を差別的に制限するものにほかならず、それが国賠法1条1項にいう違法行為であることは敢えて論じるまでもない。     

 

 3 同⑶:(請願権及び政治参加の自由の侵害)  

 被告は、請願権の侵害について、「鋪田議長がその紹介議員となることを断ったとしても、他の議員の全てがそのような態度であるかは明らかでないうえ、仮に紹介議員がなく請願法に基づく請願ができなかったとしても陳情という方法によって市議会への意思表示をなしうるところであって、原告の請願権の侵害とは言い得ない。」と主張する。

 

 第1に、本件決議は当時のマスコミの極端に偏った論調を踏まえ、本件教団を「消費者の不安をあおり、高額な商品を購入させる「霊感商法」などで大きな社会問題となった」団体として、いわば指定暴力団のような「極めて問題のある団体」と決めつけた上、「旧統一教会及び関連団体と今後一切の関係を断ち切る」と全会一致で宣言したのである。 

 

 およそ、自らが賛同した意思表明に反する行為をとることは、エストッペル(禁反言違反)とされ、自身の政治発言に責任をとるべきステイトマンたる議会人の信義に悖る。特段の事情がない限り、他の議員も同じ態度をとったことが推認されるというべきである。

 

 第2に、被告は紹介議員がなくても陳情という方法があるというが、請願法(地方自治法)に基づかない陳情には、請願において法的に保障されている「これを受理し誠実に処理しなければならない」とする誠実処理義務(請願法5条)が保障されていない。そこには明らかな法的差異があり、この差異的取扱いをやむなくさせる本件決議には、尚、陳情権の行使を制約し、これを著しく困難にする違法があるといわざるをえない。 

 

 第3に、請願の権利は、前記した国際人権B規約25条に基づく政治的参加の自由のコロラリーであり、本件決議は、この政治的参加の自由を宗教を理由にして差別的に制約するものであり、請願の権利を差別的に取り扱うものであることは明白である(例えば、請願法上の請願はできなくても陳情の自由はあるという被告の主張は、まさしく請願の権利を差別的に取り扱うものに外ならない)。

 

 4 同⑷:(宗教を理由とする差別的取扱い) 

   宗教的不寛容撤廃宣言は第2条1項にて、「何人も、いかなる国、機関、集団又は個人からも、宗教またはその他の信念を理由とする差別を受けることはない。」とし、同条2項で「人権および基本的自由の平等な基盤での承認、共有または行使を無効にしまたは損なう目的または効果を有する宗教または信念に基づくあらゆる区別、除外、制限または優先」は宗教または信念に基づく不寛容および差別として禁じている。そして同3条は、「宗教または信念を理由とする人間が相互に差別し合うことは、人間の尊厳に対する侮辱であり、国連憲章の原則を否定するものである。」とし、「したがって、世界人権宣言にうたわれ、国際人権規約に詳細に述べられている人権および基本的自由を侵害するものとして、ならびに、国家間の友好および平和的関係を妨害するものとして非難される。」としている。

 

 本件決議が、本件教団及び関連団体並びに信徒たる原告の政治参加の自由、請願権及び宗教又は信念の表明の権利を宗教を理由に差別的に取扱うものであることは明らかであり、加えて、本件決議は、それ自体、宗教的差別と敵意を扇動し、宗教的憎悪を唱道する宗教ヘイトに該当する(国際人権B規約20条2項)。

 

 それは、日本国憲法14条1項が禁止する宗教を理由とする差別であり、法の下の平等を侵害するものであり、本件決議が国賠法1条1項の違法行為となることは明白である。  

   

第4 本書における追加的主張の整理  

 1 宗教的憎悪の唱道(宗教的ヘイト)による名誉感情の侵害 

 国際人権B規約20条2項は「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する。」と規定し、宗教的憎悪の唱道(宗教的ヘイト)が禁じられるべき違法行為であることを規定する。「法律で禁じる」とは、私人間の表現の自由との調整が必要だからであるが、調整の必要のない公権力の機関である地方議会による宗教的憎悪の唱道(宗教的ヘイト)が法の制定をまたずに違法行為であることは明らかである。  

 

 本件決議は、本件教団及びその関連団体を「極めて問題の多い」団体であり、富山市議会が「今後一切の関係を断ち切る」必要のある《反社会的団体》たと宣言し、もって本件教団及びその信徒らに対する差別と敵意を扇動する宗教的憎悪の唱道(宗教的ヘイト)そのものである。  

 

 本件教団に対する宗教的ヘイトは、本件教団の信徒であり、本件教団の教義と信仰を人格の中核に置いている原告にとって自らの人格に対する侮辱であり、その名誉感情を著しく傷つけられた。    

 

 2 政治参加の自由にかかる差別的取扱の禁止について  

 国際人権B規約は、第18条1項で信教の自由と宗教的表明の自由を「すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む」として保障しており、同権利は宗教的不寛容撤廃宣言1条1項においても保障されている。更に、国際人権B規約は第25条で、すべての市民は、宗教的差別、人種差別等の差別(第2条に規定するいかなる差別)もなしに、「直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与すること」が保障されている。本件決議が「富山市議会も、藤井市長並びに当局と同じく旧統一教会及び関連団体と今後一切の関係を断ち切ることを宣言する。」として、本件教団並びに関連団体及び信徒らが本件教団の関連団体ないし信者であることを名乗ってする政治参画が拒絶することは、国連人権B規約18条1項違反はもちろん同25条及び同2条に違反することになり、宗教的不寛容撤廃宣言が弾劾する同宣言第2条ないし第4条の宗教的差別をなすものといえる。  

 

 3 適正手続保障の権利侵害について      

 本件決議は、本件教団が「消費者の不安を煽り、高額な商品を購入指せる「霊感商法」などで大きな社会問題となった団体」であり、「極めて問題のある団体」だと決めつけ、富山市議会から関連団体も含め「今後一切の関係を断ち切る」としてその政治的参加の自由を奪う差別的な不利益を強いるものである。 

 

 地方公共団体の機関が、特定の団体に対して「極めて問題のある団体」だとして、「今後一切の関係を断ち切る」という不利益を課すことを正当化するには、本件教団が指定暴力団並みの《反社会的勢力》であることを前提とする必要があるが、行政庁が国民ないし法人等の団体にかかる不利益を課すには、中立公正な審判者と聴聞の機会といった適正な手続を経ることが必要だというのが、憲法31条又は憲法13条に基づく適正手続きの保障である。本件教団及びその関連団体は、本件決議にあたり、予め弁解の機会を賦与されたり、中立公正な審判者による審判を含め、何らの適正な手続保障を受けることはなかった。 

 

 富山市議会は、新聞、テレビ、週刊誌等のメディアが垂れ流す、本件教団に対する偏見と不正確な情報のみに基づいて「消費者の不安を煽り、高額な商品を購入させる「霊感商法」などで大きな社会問題となった団体」だという刷り込み的前提(甲1)に基づいて本件決議を行ったのであり、そのこと自体、深刻な人権侵害であるといわざるをえない。

 

 そもそも富山市議会という公的機関が「今後一切の関係を断ち切る」とという劇的な不利益を課すには、「消費者の不安を煽り、高額な商品を購入させる「霊感商法」など」の事実についても、その事実の有無、程度、頻度、その宗教的理由、被害の有無、程度、政治的活動の内容、評価等について、慎重に審査する必要があることは公民の常識の類である。適正手続保障の権利が守られていないことは、行政処分の違法性を基礎付け、国賠法1条1項の違法行為性を基礎づけるものとなる。 

 

 4 本件教団の関連団体であるUPFについて  

 本件教団の関連団体であるUPF(天宙平和連合)は、2005年ニューヨークで設立され、そのボランティア活動を評価され、国連の経済社会理事会の総合協議資格(カテゴリー1)を賦与されたNGO(非政府組織)であり、その主催する国際平和イベントは、世界各国で開催されている(甲10、11:UPFのパンフレット)。 

 

 本件決議は冒頭で「安倍晋三元総理の銃撃事件をきっかけに政治と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関りの深さが浮き彫りとなった。」としているが、銃撃事件の犯人が安倍元総理をターゲットしたのは、令和3年9月に韓国を拠点に全世界をインターネットで連結して開催されたUPF主催の「シンクタンク2022・希望前進大会」のイベントに安倍元総理がビデオメッセージを届けていたことを、犯人が知ったからだと報道されている。

 

 安倍元総理が同イベントに対し、ビデオメッセージを届けたことについて、これを報じたしんぶん赤旗は、本件教団の広告塔になることであり、霊感商法等による被害を助長しているかのごとく非難している(甲12)。しかし、国連が公認しているNGOが主催する平和イベントに安倍元総理がメッセージを届けることには何の問題もみあたらない。同イベントには当時、アメリカの大統領だったトランプ元大統領もメッセージを届けていたとされる。

 

 そもそも国際的にそのボランティア活動が評価されているUPFを含め本件教団及びその関連団体を被告富山市の一切の政治的プロセスから排除するという宗教差別を正当化できる理由など存在するはずもない。 

以上